アスファルト防水のトーチ工法とは?特色や単価、施工方法をご紹介
「屋上のアスファルト防水は、トーチ工法で修繕しましょう」
「住宅密集地ではないので、トーチ工法で施工できますよ」
点検の報告でそう言われ、トーチ工法とはどんなものか首をかしげるオーナーさんもいるのではないでしょうか。
防水工事は場所ごとに適した工法があり、コストや耐久性などにも大きな違いがあります。
工法の特色をしっかり把握しておかないと、防水層が早く傷んでしまったり、予想外のコストがかかったりするでしょう。
この記事では、アスファルト防水のトーチ工法の施工方法やコストについて解説していきます。
・アスファルト防水のトーチ工法とは?
・ほかにはどんな工法がある?
・施工方法が知りたい
・防水点検は、何をいつチェックすればいい?
このような疑問を持つ方は、ぜひ最後までご覧ください。
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アスファルト防水工事のトーチ工法とは
アスファルト防水は、世界中で古くから使用されてきた防水工事です。最もポピュラーで実績が多く、ビルやマンションの屋上など、設置物の少ない広い場所に向いている施工方法です。
耐用年数は15〜25年と、防水工事の中でいちばん寿命の長い工法でもあります。
アスファルト防水には、下記の3つの工法があります。
- 熱工法(アスファルト防水)
- トーチ工法(改質アスファルト防水)
- 常温粘着工法(改質アスファルト防水)
ここでは、トーチ工法の特色や単価、施工方法について解説します。
トーチ工法の特色と単価
トーチ工法は「改質アスファルトルーフィング」と呼ばれる防水シートの裏面に、あらかじめアスファルトを塗っておきます。塗ったアスファルトをガスバーナーで炙って溶かし、貼り重ねていくことで、防水層を形成する工法です。
トーチ工法の特色・単価
単価(㎡) | 3,000~8,000円 |
工期 | 6~10日 |
耐用年数 | 15~25年 |
メリット | 隙間なく密着できるため、防水効果が高い煙が出ず、臭いが少ない既存のアスファルト防水層の上から施工できる材料が比較的少ないため、CO2の発生量を抑制できる改質アスファルトにより耐候性・耐久性に優れる |
デメリット | 火を使うため、安全上の注意が必要ルーフィングに厚みがあり、複雑な部位の施工が難しい炙りが足りないと不具合が発生する専門性が高く、技術力が必要 |
施工に適した場所 | 設置物が少なく、人や車の出入りの多い広い場所住宅密集地など、強い臭いを避けたい場所建物に重量をかけたくない屋上寒冷地 |
アスファルト防水は施工時に火を使ってアスファルトを溶かして貼り付けるため、特有の臭いが生じます。しかし、トーチ工法では、火の使用を最小限にとどめ、臭いも緩和されているのが大きな特色です。
注意点としては、専門性が高く、技術力の高い職人でなければ施工が難しい点があげられます。
熟練の職人でなければアスファルトが溶けているかの視認が難しく、バーナーで炙ってアスファルトを溶かす工程で施工不良が起きやすくなります。
トーチ工法を施工する際は、施工実績が豊富な業者選びが重要といえるでしょう。
トーチ工法の施工手順
次に、トーチ工法の具体的な施工の流れについて、解説します。
事前準備を含め、以下の5つの工程で実施します。
- 事前準備
下地を丁寧に清掃し、完全に乾燥させる。下地に勾配や凸凹がある場合は、モルタルなどで平らになるように整える。
- プライマー塗布
アスファルトプライマーを刷毛でまんべんなく均一に塗布する。
- 増し貼り
ルーフドレインや配管まわりなどを増し貼り用シートで補強する。
- シートの貼り付け
改質アスファルトルーフィングの裏面をバーナーで炙り、アスファルトを溶かしながら押し広げて圧着させる。
シートが重なる部分は10センチ以上重ね、シートからアスファルトがはみ出る程度に溶かして、貼り付ける。立ち上がりは、隅までしっかり押さえ込み圧着させる。
- 仕上げ
防水機能と外観に問題がないか、チェックをする。仕上げに、しっかりと混ぜ合わせた塗料を均一に塗布する。
熱工法と常温粘着工法
アスファルト防水には、トーチ工法以外に熱工法と常温粘着工法があります。
熱工法は、溶解釜でアスファルトの塊を220〜270℃の高温で溶かし、アスファルトルーフィングを貼り付けていく工法です。
熱工法は古くから使われているため、ノウハウが蓄積されており信頼性が高い工法といえるでしょう。
溶解釜を使用するため作業には危険が伴い、強い臭いも発生します。しかし、アスファルトの硬化時間が短いため、比較的短い時間で防水層を形成できます。
常温粘着工法は、常温工法、冷工法とも呼ばれ、火や熱を使用しない工法です。
常温で使用できる改質アスファルトルーフィングの裏面に、ゴムアスファルト粘着層を交互に貼り付けて、防水層を形成します。
木造住宅の密集地などでも施工できますが、熱を使わないため密着度が低く、防水効果はトーチ工法に劣ります。また、防水効果を高めるためにシートを何層も重ねる必要があり、防水層の重みで建物に負荷がかかるのもデメリットです。
このように、工法によって特性が異なるため、施工場所ごとに適した工法の選択が重要です。
検討の際には、3社以上の防水専門業者に相見積もりを取り、施工内容や価格を比較し、決定しましょう。
アスファルト防水と改質アスファルト防水の違い
トーチ工法はアスファルト防水の中でも、改質アスファルト防水に分類されます。
アスファルト防水と改質アスファルト防水の大きな違いは、アスファルトルーフィング(防水シート)の素材です。
改質アスファルトルーフィングは、合成繊維不織布を使用しており、合成ゴムやプラスチックなどさまざまな材料を添加して、耐久性を強化しています。
アスファルトルーフィングが3〜4層になるのに比べ、改質アスファルトルーフィングは1〜2層で充分な防水効果を確保できます。
アスファルト防水の点検ポイント
アスファルト防水に限らず、防水層は定期的な点検とメンテナンスが必要です。
放置すると、少しずつ防水層が劣化してしまい、目に見えない細かな亀裂から雨水が侵入します。雨水が建物の内部を侵食し、やがて雨漏りなどが発生してしまうと、修繕コストも高額になってしまうでしょう。
建物の寿命を長くするためにも、防水層の定期的な点検、メンテナンスが重要といえます。
アスファルト防水の点検ポイントは、以下の3つです。
- 保護塗料の色あせや退色
- コンクリートのひび割れの有無
- 防水層の浮き
メンテナンスの時期を見極めるポイントは、点検ポイントに異常はないか、前回の防水工事からどのくらい経っているか、の2点です。アスファルト防水は15〜25年で寿命を迎えるため、前回の防水工事から15年ほど経過したら、メンテナンスを検討してみましょう。
メンテナンスを行う際は、3社以上の防水工事専門会社に相見積もりを取り、費用や施工実績を比較してみてください。
まとめ
トーチ工法は、改質アスファルトルーフィングの裏面に塗っておいたアスファルトをガスバーナーで炙って溶かし、貼り重ねていく工法です。
ほかのアスファルト防水と比較して火を使うリスクや建物への負担がなく、臭いなども緩和されています。
しかし、施工には高度な技術が必要で、技術不足は施工不良に陥る可能性があり、注意が必要です。
アスファルト防水は防水工事のなかでも最も寿命が長い工法ですが、定期的にメンテナンスをしないと建物の寿命を縮めてしまいます。点検ポイントは色あせ、ひび割れや防水層の浮きです。耐用年数が来る前に、メンテナンスを行いましょう。